6月15日(日)に2025年度の巡回講習が行われました。テーマは、「美の正体」で「いけばなの目的は、いけばなを通して美というものの正体を求め見極めることではないか」と宗匠は述べています。講習は、第一部「守」から「破」ー守り、育てるものー、第二部「破」から「離」へーそして、紡ぎだすものの二部構成で、池坊いけばなを「守」「破」「離」という過程を経ながら体系的に学ぶというものでした。



スライドショーと実技で、分かりやすく池坊の歩んできた道を説明してくださいました。
講師は、中央研修学院研究員の今川清先生。今川先生は、初めての陸前高田市への訪問でしたが、これまで当支部が指導を頂いてきた東勝行先生の門弟である島津範好先生のお弟子さんということで、ご縁があるものだと感激しました。


中央研修学院研究員 今川 清先生
〇 正風体の歩んできた道
池坊には、室町時代から受け継がれる立花、江戸時代に確立した生花にそれぞれ「正風体」と呼ばれる型があり、生花は、各地で様々に生けられていましたが、42世池坊専正が統一を図りました。
正風体には型はありますが、池坊いけばな→草木の風興(個性)+よろしき面影(作者が理想とする心の中に浮かぶ姿や様子=作者の個性)を一瓶の中で表現するということを忘れてはいけないということです。
先生は例として、桃の生花を生けた時、ご自分の師匠から「桃を使って真・副・体を生けているよ。」と話されたということです。草木の姿をよく見て草木の個性を生かして生けることの大切さを教えてくださったお話でした。


(左)生花正風体 花材:トルコキキョウ
(右)生花正風体 花材:ニシキギ 小菊


〇新風体の美感
1977年に生花新風体が発表されました。
「主」・・・感動、「用」・・・変化・陰陽、「あしらい」・・・「調和=他を生かしながら自らも生かされる」で構成されて、命あるものから作品の背後にあるものを感じさせるいけばな
(左)生花新風体
花材:バラ アレカヤシ ナツハゼ
(右)生花新風体 花材:ナツハゼ キキョウ

「池坊には正風体という型はありますが、それは相対的なバランスを示すもので、草木の出生を生かし、流動的に変化をいたします。そのため、様々な枝を使いこなして、花を生けることができるのです。」池坊専永
立花正風体
花材:ハッカクレン ヘリコニア アジサイ キキョウ オクロレルカ シマフトイ タニワタリ ナルコ タマシダ コギク ウーリーブッシュ ナツハゼ
〇時代への適合性
「時代の感覚は常に新しくなりますので、踏みとどまっていては時代に遅れを取ることになります。」池坊専永
現代の美的感覚
立て花の新感覚 花器 花材
巡回講習の指定花器を使用して立て花を生けてくださいました。剣山を使用できるので、手軽に立て花を生けることができそうです。

立て花 花材:シマトネリコ へレコニア ヒメユリ ウーリーブッシュ シキミア シマフトイ タマシダ グリーンスケール オキナワシャガ ナデシコ ゲイラックス シャガ
〇新たな挑戦
「学んできたことを礎として、現代の完成が反映する花を常にいけ続けてください。」池坊専永


(左)自由花 花材:カーネーション ハイブリットスターチス スターチス ニチニチソウ ヒペリカム アジアンタム
(右)自由花 花材:クレマチス アジアンタム オンシジューム スチールグラス
フィナーレには、来場した会員の参加協力をもらい作品を生けました。


プロジェクターで映しだされた虹の背景に花が輝き、チョウチョが羽を動かして飛んでいるような作品に、来場された皆さん感激の声をあげ、「池坊のお花はやっぱりいいなあ。」とい声が聞こえてきそうな温かい雰囲気に包まれました。
今回の巡回講習は、池坊の長い歴史を短い時間でたどるには時間が足りなかったとは思いますが、池坊いけばなの柱となってきたところをしっかりと学ぶことができましたし、今後への希望をもつことでき、意欲をかき立ててくれたことと思います。
今回も先生が話された「伝統は今の積み重ね」という言葉を聞くたびに、自分も池坊いけばなの道を歩む一人だということに改めて気づかされます。これから時代と共に、池坊いけばながどのように変わっていくのか楽しみでもありますが、その時代に合わせて花を生け続けていくためにも学び続けていかなくてはいけないという思いを新たにした一日となりました。